THE READING EXPERIENCE

他人のビジネスを擬似体験できる本こそ至高と信じ、そのような本を発掘・紹介するブログです。

新聞記事と東京地検特捜部の関わりがわかる→真山仁「標的」の書評・感想

自己啓発本でもなく仕事術的な本でもなく、他人の人生を疑似体験できるような本こそが最も学びの多いビジネス書である、と考え、そんな学びがありそうな本ばかりを選んで読んでいます。そしてこのブログでは、そのような本を発掘・紹介しています。

要するにそれはノンフィクションの自伝とかになるのですが、決してノンフィクションだけを取り扱っているわけではありません。経済小説だって、大いに学びが得られるものです。本日紹介する本は、真山仁さんの「標的」です。 

 

標的

標的

 

日本初の女性総理大臣がほぼ決まった女性を起訴する話

 「標的」は、東京地検特捜部に務める主人公の仕事を描いたシリーズの第二作目。前作「売国」は、このブログでも紹介しました。

東京地検特捜部って何してるのかわかる→真山仁『売国』の書評・感想 - THE READING EXPERIENCE

ストーリーとしては、与党の総裁となった女性政治家を起訴する話。また、高齢者ビジネスとして批判の的にもなることがあるサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)もテーマのひとつとなっており、この点も丹念な取材に基づくリアルな描写は学びがあります。

最後どのような結末となるのかは、本書を手にとって確認してください。主人公の検察官が正しいとも、被疑者のほいが正しいとも、どちらともいえないのが、この本の魅力。そのような描写が、読後感に与えるいい意味でのもやもやの発生源になっていて、単に小説としても面白いです。

最大の学びは、新聞記者の仕事ぶり

この小説では、スクープを狙う新聞記者も描かれます。編成会議から取材の手法、どう取材者へヒアリングし、どう記事にするのか。悪い記事を書こうとしている相手にどう取材するのか、へりくだって情報を取るのか、最初から喧嘩腰で厳しく挑むのか。自分が崇拝している政治家について良い記事を書きたいのに新聞の方針が違った場合の葛藤やいかに。

そういう部分が、真山仁さんも物書きだからこそか、なんか東京地検特捜部のことよりも生々しさが伝わってきたというか、なんかそっちのほうが気になったんですよね。

いまの自分も、東京地検特捜部のことはあくまで知識欲の一環として捉えた一方、新聞記者のほうが自分のビジネスや趣味に近いというか、ブログの記事を書くのにだってコタツ記事と取材記事があるなかで、「ネタを取るのにそんなに苦労してるのか」という気づきがあります。

複数の書籍を並行して読むと、いろいろ気づきが多いと言いますが、まさにその状況が起きまして。この本を並行して読んでおりました。

なぜ週刊文春はスクープを連発できるのか?「週刊文春」編集長の仕事術を読んで/書評・感想 - THE READING EXPERIENCE

週刊文春が、ネタを取るのにいかに苦労しているのか、そしてそこにはいかなる大義があるのか、その内面がわかります。

もちろん東京地検特捜部がどのように機能し、どう調査し、どう被疑者を口説いていくのか、なかなか見ることのないその内情を垣間見ることができる本書。本ブログおすすめの経済小説です。Kindle版もありますよ。

 

標的

標的