THE READING EXPERIENCE

他人のビジネスを擬似体験できる本こそ至高と信じ、そのような本を発掘・紹介するブログです。

なぜ週刊文春はスクープを連発できるのか?「週刊文春」編集長の仕事術を読んで/書評・感想

2016年は、週刊文春が世を騒がせた年として記憶されていると思います。「SMAP裏切りと屈伏」「甘利明氏の金銭授受疑惑」「ベッキーさんの禁断愛」などスクープを連発し、世にもう一度週刊文春の名を知らしめた年でした。編集長・新谷学さんの書籍【「週刊文春」編集長の仕事術を読んで】を紹介させていただきます。

【「週刊文春」編集長の仕事術】は優れたノンフィクション・ビジネス書

広告取扱ではインターネットに抜かれ、置き換えられると思われている「雑誌」。そんななか、インターネットメディアには週刊文春を超える報道誌は見当たらないのが現状ではないでしょうか。

このブログは、他人のビジネスを擬似体験できる本こそ至高と信じ、そのような本を発掘・紹介するブログ。ノンフィクション・ビジネス書を紹介するブログとも言え、「大王製紙前会長 井川意高のカジノ狂」や「リブセンスの最年少上場まで」などを紹介してきました。

www.thereadingexp.com

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そのなか、なぜ【「週刊文春」編集長の仕事術】という自己啓発本っぽ仕事術の本を紹介するのかというと、この本は紛れもなく編集長・新谷学さんのノンフィクション・ビジネス書であり、まるで生死を賭けているような仰天取材例のオンパレードだからです。 

「週刊文春」編集長の仕事術

「週刊文春」編集長の仕事術

 

WEBメディアに関わる人にこそ、読んで欲しい

 雑誌No.1の座にいる週刊文春がここまで本気で紙面づくりをしていることを知り、同じ「コンテンツ」を取り扱うインターネットがいかに未熟かということを意識せざるを得ません。

インターネットで仕事をしてると、出版社とか記者や編集者、ましてや編集長という職業の人に会うことってなかなか無いと思います。でも、キュレーションメディアをはじめ多くのいわゆるWEBメディアが、実は仕事領域として被ってるんですよね。

出版社がWEBに参入して、課金形態やマネタイズを模索しながら無料で取材記事を配信している「東洋経済オンライン」や各誌、「BuzzFeed Japan」のようなメディア、Yahoo個人で活躍するジャーナリストの方々が、インターネットにおける報道メディアの一端を担っています。しかし、検索エンジン最適化「だけ」を目指すメディアやブログの多さを見ると、なにかそこに魂を込める手段はないのかな、と思います。

この本を読むまで、週刊文春はただのゴシップ誌で、ただ単にスクープを狙うパパラッチ的な雑誌だと思ってました。ただの建前だとか、大言壮語という人もいるかもしれませんが、編集長・新谷学さんの主張と決意に、僕は週刊文春の存在意義に納得しました。

なぜ週刊文春はスクープを連発できるのか?

 ネットメディアも記者を雇ってスクープを見つけろとか、コタツ記事を書くなとか、検索狙い記事だけじゃなく主義主張を世に問えとか、そういうことは言いませんが(この記事もコタツ記事だし検索狙いだし)、いわゆる「課金メディア」である週刊文春が、いかに課金されるために面白い記事を作るのか、という部分は多いに参考になると思います。

いくつかの要素を取り上げるとしたら、このあたりでしょうか。

・その世界のキーマンとつながり続けること
※キーマンからネタ提供を受ける場合も多いとのこと。でもその親しいキーマンを「文春砲」の相手にすることもあり、それでもなお関係性を維持するんだから、ただならぬ人脈術ではある。

・現場の判断で、優先度を変えること
※前田敦子が泥酔して佐藤健にお姫様抱っこされる様を激写したのは、新人記者。別件で前田敦子を追跡していたところ、麻布十番の店に続々と人が集まり、本来の取材を辞めて張り付いていたとのこと。

・不可能を可能にする覚悟。
「無理と言われてからが編集」と語るのは、「はじめての編集」の著者・菅付雅信さん。その意見と同じく、面白いことをするには、難攻不落の壁を突き破ることが必要だという。

・最終的には、上記が機能するような組織づくり。
※本書には週刊文春の組織が事細かに解説されており、ここは特に納得度高く参考になります。真似はなかなかできなさそうだけども。

【「週刊文春」編集長の仕事術】はKindle版もあるよ。

稀代の編集長が、在籍中にその編集長の仕事っぷりを残した本書。誰もがコンテンツを発信できる昨今において特にその仕事に意義があるように思いました。ぜひ読んでみてください。

「週刊文春」編集長の仕事術

「週刊文春」編集長の仕事術